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クッキーのかけらもクッキー

0109_CookieCrumb 

私には、お行儀の悪い美人の親友がいた。

彼女の大好物はケーキとクッキー。

まるで、茶道の厳粛さで
ひとかけ、ひとすくいずつ
たいらげてゆく。

しっとりとしたケーキの場合は、
お皿に散らばったカスまで
フォークの裏に
ぎゅっと器用にひっつけて、
落っこちないうちに
すばやく口に運ぶ。

パラパラしたドライなクッキーの時は、
スプーンとフォークをうまく使って
ひとかけらも残さずたいらげる。

私と二人だけで
午後のお茶してるときは
手を使って無邪気にペロリ。

行儀、悪いっていわれるから、
仲良し以外とお茶するときは
カスは残すようにしてるんだけど、
カスに悪いことしてるみたいで
ここが痛むわ。

とハートに手を当てる。

おおげさなぁ、
とさすがの私も呆れ顔。
石の気持ちはわかっても、
クッキーのカスの声は
私には届かない。

「だって、このクッキーを見て。」

真剣そのもので私のお皿にのっている
まあるいチョコチップを指差す。

「このクッキーに引っ付いているうちは
どのかけらもクッキーで、
いったん、離れてしまうと、
カス、とよばれ、見向きもされない。
まるで、何らかの原因で
社会から離れて
Outcast とよばれる人々への待遇と同じじゃない?

それって、納得できないよ。

大部分と
ちがう考え方、生き方、境遇を選ぶ人々も、
あえなくそういう立場にある人々も
社会のカスではなく、
社会の一部でしょ?

みんなと同じように尊重されて当然じゃないのかなぁ。」

そういって、目の前のケーキに目を落とす彼女の
美しい横顔に
ふっと、青い影がさす。

母親は台湾人。
父親がフランス人。
バランスを崩して今は憎みあう二人が別れる前、
まだ幸せが溢れたころに生まれた宝。
それが彼女だ。

色白で、高い鼻。
優雅な長い首に、切れ長の一重瞼の黒い目。
どんな思いで、自分を肯定し、
二つの文化圏を行き来しているのか‥。

つい先ほどの話など忘れたように
楽しげにチーズケーキをほおばる彼女を見ているうちに
呪文のように聞こえるフレーズ。

クッキーのカケラもクッキー。
クッキーから落っこちてもクッキー。

世界中のいたるところで
カス扱いされている人々や、物達。

社会のルールにひっつかなくてもいいから、
おいしいカスであれ!

彼女に教えてもらったあの教訓を
この石の精霊と供に
あなたに送ります。

Data
Serial #: 0109
Title: Crumb カッス
Size:
Type: Stone Art
Date: 2006 March
Status:
Price:

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コメント

本当!クッキーやケーキを形作っている時代には
美味しくて素晴らしいものなのに、一旦majorityから離れた途端
(同じように素晴らしく美味しいにもかかわらず)ゴミ箱行きになる。
知っていると思うけれど、私もお皿に散らばったカスを一つ残らず食べるよ。

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