
Data
Serial #: 0031
Title: Lenny
Size:
Type: Oil on Canvas
Date: 2003-2004
Status: Sold
私の親友のスーザンが面白い依頼を持ってやってきた。 自分の婚約者の母親がどうも苦手な彼女が考えた必殺の「気に入られ法」、である。
レニー(婚約者)のまだほんの赤ん坊だった時の写真から油絵の肖像画を起こしてほしいというのである。
そしてその絵を義理の母のサプライズクリスマスプレゼントとして進呈する。
彼女が私に手渡した豆粒のような写真をみて内心私はため息がでた。 しかし、引き受けないなどという選択肢は初めから頭になかった。
スーザンは私が困っている時いつも手を差し伸べてくれた真の友達だ。大好きな彼女を私が助ける機会なんてめったにない。
日ごろの恩返しと画家の誇りにかけて絶対可愛く描きあげてみせる! 私は俄然張り切ってこのプロジェクトに取り組んだ。 実は、私、
赤ちゃんを油絵で描くのはその時がはじめてだった。
レニーの赤ちゃん時代の写真を手に、スーザンが語った思いは確かこんな風だった。
あの女性(レニーの母)は息子たちへの独占欲が異常に強い。 まして、レニーは長男、思い入れも執着もなおさらだ。 私は彼女と食事をするたびに睨まれ、無視され非常に居心地が悪くせっかくのご馳走も喉を通らない。 これから結婚してもずーとこんな調子で攻撃視されると思うと気が重い。 そこで、私は意思表明がしたいのだ。 つまり、 私はあなたの息子をあなたから取ろうとしているのではないのです、と。 この絵を見ることで母親はいつでも可愛い赤ちゃんだった息子との思い出に浸れるわけだし、 電話一本で息子はすぐに会いに飛んでくるだろうということもすぐ分かるにちがいない。 だから、赤ちゃんの絵は 「決してあなたと息子の間は引き裂かれたわけでもなく、関係が疎遠になったわけでもないのです、」 という私からのメッセージを架け橋して彼女に伝えてくれるにちがいない。
と、こういう感じである。
私はこの小さな絵を描くのに1ヶ月を要した。 毛糸のふんわりした質感と、赤ちゃんのつぶらでいたずらっ子のきらきら光る瞳。 まぶしいくらい明るい冬の日差しの中、はじけるような笑い声とともに、鮮やかによみがえるone winter morning. ふだん気難しいレニーの母に私もあったことがある。 彼女のしかめっ面がふっと和らいでその心が息子と過ごした幸せな思い出に包まれるような絵が果たして描けたのだろうか。 あの人は、 この絵を気に入ってくれたのだろうか、それは、実は、今もよく分からないのだった。